2. 現代鍼灸低迷の原因は古典医学理論にあり!新鍼灸
- “人体は無限に未知の世界である。鍼灸理論は日々刻々発展する理論でなくてはならず、効果のみが理論を証明する”
中医学鍼灸、古典医学理論鍼灸は勿論であるが現代医学理論鍼灸までの、今日の低迷
の原因はなぜか?
その根源は古典医学理論にある。今日の鍼灸法のすべてが古典医学理論の足かせにより向上、進歩のない鍼灸に陥っている。人体は古典理論が視て、古典理論の指示にしたがって刺鍼する。そこには体内の構造も機能も、術者の人体内を視ない鍼灸の先入感から、術者自身で体内を透視診断する能力が失われていくのである。
- 鍼灸三千年の歴史は、鍼灸治療行為が伝承されてきたというだけで価値がある。鍼灸治療に付随する古典医学鍼灸理論は余分であり、弊害を生む。その古典からの強固な先入観が新しい発見を拒むようになる。古典理論は鍼灸の向上、進歩のないものにしてしまった原因であることを主張する。
鍼灸治療の実体が伝承されていればよいので、理論は伝承するべきではない。治療法は人体と、病気の多くは未だ未知の存在であるから、各時代にあった新しい生体のとらえ方から新しいものを発見しなければならないのである。しかし、現在の古典医学理論の素問霊枢、難経は少しの変わる余地のない全肯定のバイブルになってしまっているのである。
経絡理論、気血津液理論、五行理論、陰陽理論が正しいとするならば、これら古典理論の執筆者は生体の不可視的もの、体内のものを透視により診断していたのである。経絡の流れ、内臓への気血の循環状態を知り、それらが正常になった状態を確認する鍼灸臨床を行っていたことになる。
それに対して、後世の現代の鍼灸臨床家は人体の観察を可視的なもの、それも体表面しか見ずに鍼灸臨床を行い、体表下のものは一切、古代医師の指示(古典理論)に従って、行っているのである。指導者はせいぜい刺鍼後人体の一部部位に対して気が至ったことに得意になっているくらいである。つまり、刺鍼後、プロカインの神経ブロックまで使う中医学鍼灸理論、現在の古典医学理論鍼灸は全く体内を視ることができない、視ようともしない。気の理論の鍼灸を行い、気の循環が視れない鍼灸。治療の対象は症状の緩解、消去であり、術者自身は病者の体を視ていない現代西洋医学と変わりのない対症療法ということになる。
絶対視した古典医学理論に基づく鍼灸からは新しい発見は何も生まれない。鍼灸がなぜ低迷しているのか?それは古典医学理論の足かせ、洗脳が原因であり、治らない鍼灸になっていると言うのである。
○ 今日の国民は鍼灸に治療的関心を向けず、市井において癒し系の手技療法に頼っているように、鍼灸界は否定しても古典理論が治していない現実がある。
○ 鍼灸界の大きな問題の一つに、大勢の鍼灸師の臨床に対する意欲、情熱の稀薄さがある。多くの疾患に苦しむ多くの病者の実態に対した関心と、高度の治療技術を目指す情熱が感じられない。なぜ、鍼灸師は治すことに関心がないのか?単に、職業観としてしか鍼灸を見ないのか?
○ 古典医学理論には、解剖学的診断が一切除外され、頭蓋骨、脊椎、四肢骨という臓器の容器、身体の支柱を省き、脳脊髄という身体機能の中枢までも奇恒の腑として構造的診断を排除した。解剖学的内臓も存在しない。この理論では全内臓疾患に対する脊椎内、脊髄を走行する自律神経系の因果関係、身体全疾患に対した正しい診断と的確な治療効果は望めない。
○ 眼科疾患に対して眼球を収容する蝶形骨の診断、鼠径ヘルニアと直結する腸骨の変位。難聴、顎関節症での側頭骨の変位さえも診断できないのである。配穴法においては、上下配穴、左右配穴、表裏配穴。これらの鍼灸法は陰陽論、五行論からの理論のための治療になり、理論に満足して、治す理論からは外れている。治病求本と言い、標本兼治とも言う。治病の初めから矛盾を表出させる。
○ 難聴の蝸牛神経の伝達上の原因部位を特定できず、眼球の障害組織を診断できない。頭痛の障害脳組織を特定できない。高血圧でも、血流循環障害部位を橈骨動脈の脈診より特定できるだろうか。橈骨動脈の脈状から、解剖学的全内臓器機能を診断できるのだろうか。
○ 鍼刺とは鍼灸治療の理論から効果のすべてを決定するもので、刺鍼の瞬間から全身の血行、神経系、筋肉系、リンパ系が変化するのである。現代の鍼灸臨床家は刺鍼直後、1秒2秒と変化する全身組織の機能回復状況を感じ取れているのだろうか?刺鍼直後2秒で下腿まで温かくなるのである。気血津液の経絡循環理論を標榜するのなら、刺鍼から数秒で変化する生体全体の経絡循環状態を確認、説明するべきである。全身の体表、体内の組織機能状態、精神状態の健康度を感じ取るのが本来の望診である。刺鍼の前と、刺鍼後の瞬時の全身的血流状態の改善を知覚できなくては治療ができない。
○ 古代に華佗が曹操の脳腫瘍を指摘し、扁鵲が塀外から邸内の病者の体内透視をしている。文献に残されていないだけで、透視ができないレベルの名医など存在するはずがないのである。
○ 鍼灸界は視野が狭い。筆者は中医学を含め、鍼灸界が自己満足、自己陶酔の世界と言わざるを得ない数多くの体験をしてきている。たとえばアメリカを中心とした、カ
イロプラクティック、オステオパシー医学の一部では、現代西洋医学が及ばない、脳生理学、生体生理学理論を発見している。脳、頭蓋骨の呼吸運動、内臓の呼吸運動、脳脊髄液循環理論、そしてそれらの理論に基づく頭蓋骨調整法、生体機能調整法が体系化されていることは手技治療界の常識である。
○ 古典医学理論の創始医師に何らかの透視診断能力が基にあったことは疑いがないことであるが、伝承してきた後世の医師はその理論を盲信するだけで、自らの透視診断を修得せず、検証しなかったことが今日の鍼灸理論の問題点につながると思う。古代の名医は臨床において、古典医学理論とは別の透視を中心とした、シンプルな鍼灸理論による臨床家であったはずと考えている。透視とは生体解剖診断である。
○ 扁鵲は一人ではなかったとも言われ、その扁鵲が難経の編者でもあり、脈診の元祖であったことも意味深い。なぜなら、体内透視ができれば橈骨動脈の脈状など全く無用であるからである。そこには、古典医学理論が伝承されてきた謎がある。
○ 経穴刺鍼は理論に基づくと言え、刺鍼後にならないと効果が分からないという。そして刺鍼の効果を見て、選穴も診断も変更する。刺鍼後を見ないと結果が分からない刺鍼前の診断とはなんなのか?
○ 鍼灸の効果
国内17万人の鍼灸師に問いたい!鍼灸の治療効果が、50年前、100年前からどれだけ進歩、向上してきたのだろうか?養成機関が大学、大学院と発展してきたとは言え、反面、代替医療の分野で癒し系、マッサージ系施術が人気を得、鍼灸師も治すための治療を離れ、癒し系に進むことを当然視している。従来から鍼灸界の主流は、鍼灸専門が少なく、指圧、マッサージが併用されてきた。伝統の古典鍼灸理論もエビデンス鍼灸も治療効果を上げられていない現実がここに露呈されているのである。
- 全疾患を治す鍼灸の実現は、鍼灸界の極端な閉鎖性の改善以外にはない。臨床公開を中
心とする医療である。鍼灸師は鍼灸学校在学中から卒後、どこにも実際の鍼灸臨床現場を見ることなく、鍼灸効果を知らないまま終えているのである。
見せない鍼灸から見せる鍼灸、学習者は見ようとする鍼灸に関心を持つだけの臨床に対
しての情熱がなくてはならない。料理の味は食べて見ないと分からない。食べさせない料理でレシピを誇っても意味がない。膨大な理論が治療効果を隠し、理論が治療効果を錯覚させている。理論を指導してもその治療効果を公開しないという他の世界ではありえない閉鎖性が鍼灸界の特徴である。これは、国内に国外の鍼灸界を問わず、変わらない。
- 画期的に治る鍼灸、現代西洋医学を超え、リードする優れた治療効果の鍼灸は実に容易
である。治療効果を先に挙げ、そのための理論を持つ鍼灸に変えることである。見聞し、検証することで、そこから次々に欠陥が見えてきて、改善し進歩する鍼灸が生まれるのだが、鍼灸臨床を全公開する指導者は従来存在しなかった。それだけの臨床に対する自信がなかったのだろう。それゆえに筆者は新鍼灸法を長年公開し、臨床に前向きなすべての鍼灸師に披露してきたのであるが、それでも臨床見学の申し込み者はごくまれである。
古典理論で言う“未病を治す”も詭弁である。多くの既病を治せない鍼灸がなぜ未病の予知ができるのだろうか?未病に対処するのは人々の個人的生体観、健康観によるもので、治療行為が他者の養生法、健康管理にまで介入するべきではない。
「新鍼灸法とは何か?」
- 新鍼灸法の特徴は、
①筋肉反射テストと触診での完璧な正常・異常診断法に基づいている。②骨格系、脳・脊髄系、内臓系の診断を重視する。③鍼により治すのではなく、逆の観点で、全身組織が同時に治る点に刺鍼する。④脈診、舌診で内臓、身体組織を間接的に知ろうとせず、解剖学的身体組織、機能を直接診断する。⑤標治法が存在せず、全疾患位わたり1~2点の本治法で治す。⑥脳内、脊髄を診断できれば、身体的疾患、精神的疾患の全疾患わたり、得手不得手はない。⑦筋肉反射テストにより症状の意味、原因を的確にとらえる。さらに各疾患間の因果関係、すべての原因の根源的原因を追求する診断をする。⑧診断法として望診の究極である透視診断に向けた理論がある。
以上のポイントは、ほとんど説明せずに奇恒の腑として古典医学理論が排除した脳、髄、骨、脈、女子胞を逆に重視した鍼灸法である。
○ 医療とは一般人が日常的に使用する触覚、感性では不可能なのである。理論の学習以前に治療家の身体になっている、治療家の体づくりが先決である。
「新鍼灸法の基本理論」
- 新鍼灸法の基本的身体観には人体の新しい「気」理論がある。それは、身体を縦に分割した3領域を上下に流動する気理論である。気血津液を循環させる経絡とは異なり、動脈・静脈の循環を主体とする「気」という術者が実際に感じ取れる概念である。新鍼灸法はその気の流動を正常にするための刺鍼であるが、刺鍼点は、
- ①後頭部の下項線上、右か左の1点か両側②外後頭隆起部の1点。①と②の3点の内の病位診断理論による1~2点のみの浅刺鍼で全疾患を治療する。
- 以上のポイント①は横洞溝の外面、②内後頭隆起の外面でいずれも小脳テントの付着部位と関係する。少数刺鍼は生体が治る刺鍼の条件でもある。この3領域の病位とは。中心症候が脊髄白質、第3脳室、右半身症候は右脊髄灰白質、右側脳室、左半身症候は左脊髄灰白質、左側側脳室とそれぞれの機能低下と関連し、小脳テントの拡張、収縮、脳脊髄液循環にも関わっている。3領域病位に基づく3部位での1~2点の刺鍼でなくては脊髄液(CSF)循環にかかわる左右側脳室、第3脳室の障害を調整することはできない。そして身体的疾患でも、精神的疾患でも全疾患にわたり、標治法、局部鍼はない。
- 四診のうち中心となるのは望診であるが、望診が高度化するにしたがい体内透視の領域に入っていくのだが、問診に頼るのは初心の段階である。触診における皮膚の浅層、深層、筋肉の浅層、深層。骨格と靭帯の状態、動脈、静脈の血液循環を知る微細な感覚が人体を診断して、刺鍼による治療を導くのである。頭部なら頭蓋骨、脳、頭蓋内の頭蓋硬膜と脳脊髄液の循環状態まで知覚できる修練が求められる。
- 毫鍼一~二本での後頭部1~2点の刺鍼後、3秒で全身の血液循環が改善され、全身筋肉、内臓が温かくなり、弾力が生まれる。脳循環が改善し、聴覚が向上し、視界が明るくなる。その変化は2秒後から始まる。
○ 鍼灸の低迷の二つ目には、鍼灸学生の鍼灸治療に対する意欲の無さがある。臨床に関心のない大量の鍼灸師の流れは、臨床に対する情熱のない鍼灸学生の段階から始まっていて、結果的に入学することだけが主目的になっている。鍼灸師資格は鍼灸臨床を認可する資格であり、卒業証書ではない。臨床ができない、する気もない鍼灸師になぜ鍼灸師資格が与えられるのだろうか?
○ 鍼灸理論にも種々矛盾が存在するが、診断理論の代表例にO-リングテストがある。大村氏がO-リングの基にしたAKの筋肉反射テストを理解せず、徒手筋力テスト(MMT)と混同してオリジナルテストとしたもので、診断結果には全く根拠がない。この理論は虚構であり、一時多くの鍼灸師が採用していた。自身で検証せずに診断結果を権威者に仰ぐ権威主義が鍼灸界の弱点である。それに便乗したテストが入江FTであるが、論ずるに値しない。
○ O-リングテストの矛盾点を3冊の拙著、2巻のDVDでも論証し、実験してきた。O-リングが難解と感じた鍼灸師も、習得できなかった方が正しかったのである。大村氏自身の主観が決定する正常・異常のプラス4~マイナス4での9段階の筋力テストならば、ピンチメータという客観的計測器がある。権威に依存しやすいな体質に気づき、臨床上重大な診断法に混在する擬似科学性理論を検証しなければ、鍼灸界の低迷、衰退兆候はとどまらない。
○ 治すことを嫌う鍼灸師
従来の鍼灸がなぜ治せられないのか?それは治せないのではなく、それは各指導者にも
治すことを避けているとしか思えない姿勢が見られる。あらゆる研修会場に行っても臨床に対する熱意が感じられないのである。近年、治すことを避け、効果の判明しない美容鍼に憧れる傾向まで起きている。
- 新鍼灸法の目標
驚異的医療効果を上げる鍼治療の可能性に気づき、鍼灸師資格の真の意味を知り、そして現代の扁鵲たらんとする名人鍼灸家、ナンバー1たらんとする情熱ある鍼灸家が読者から次々に出現し、全国の病者から喜びの声が満ち溢れる日を望んでいる。
令和元年6月